18th Century Silver

18世紀銀器は少し集めたのですが、色々なハードルが高く、結局18世紀シルバースプーンに特化してHPに載せる事にしました。
また18世紀以前の物、また Fiddle pattern のように18世紀を超えた物も含まれます。
これは英国スプーンは18世紀までにほぼ基本デザインが決まり、19世紀初期の Kings pattern からは Albany pattern, Lily pattern など一部を除いては、、基本パターンからのアレンジデザインが殆どですので、その原型を集めてみました。
尚、右の画像は少し残ったスプーン以外のジョージアン銀器です。向かって左より
Silver pot John Emes London 1800-1 (ポットも台も大変美しい彫りのなされている繊細なセットです)
Suger Tongs Hester Bateman London Lion Passant刻印のみ(ピアッシングはへスターの物でも後期、もう1本は初期と思われます)
Tea Spoon 18世紀後半
Suger Nippers 18世紀 Lion Passant刻印のみ
Butter Knives Peter & Ann Bateman London 1799-80 (柄のみMoses Brent)
Tea spoon Hester Bateman London 1786-7
Tea soon Peter,Ann & William Bateman 1805-6
18世紀英国スプーンの概略

スプーンの歴史は大変に古く、青銅器、鉄器時代にも遡れ、それらの時代のスプーンの材料は骨、鹿の角、木の枝先に貝殻をつけた物など、様々であった。
ローマ時代にはすでにブロンズ、ピューター、シルバーのスプーンが作られており、そのレプリカも現在作られている。

英国シルバースプーンはB.C.50頃グレートブリテン島へのローマ人の侵入と共に,ローマ風スプーンが伝えられ、5世紀にブリテンにおけるローマ侵略が崩壊した後も、ローマ風スプーンは用いられた。
ローマの後に侵入したサクソン系スプーンは10世紀辺りから広まり出し、ボールは葉型のように大きくなり,ボールと柄は動物型の接合部によりつなげられ、柄の先はKnopと呼ばれる小さなコブ(ドングリやダイヤ柄など)等で飾られていた。
それらはその後16世紀末に出現したアポスルスプーン(apostle spoon 使徒スプーン)やシールトップスプーン(seal-top spoon)などの原型になったのであろう。

17世紀半ばになると、クロムウェルの台頭により清教徒主義が勢力を強め、アポスルスプーンなどのカソリックの影響の強い物は好まれなくなり、柄の部分が平坦なスプーンが登場する。このスプーンが柄やボールの変遷を続けながら後の英国スプーンの主流となって行ったと思われる。

英国18世紀スプーンの装飾(形状)の変遷に関して下記に画像を載せ、説明も加えるので参考にして頂けたらと思うが、あくまでもこれは目安であり、それぞれのパターンは年代的に重複する部分も多く、またロココ様式の装飾やオンスロウパターン(Onslow pattern)のように突然面白い意匠が出てくる事もある。

18世紀英国銀器スプーンの刻印

18世紀英国銀器スプーンの刻印は,1300年に制定され、1500年辺りから施行された。

純度刻印: Sterling lion(Lion passant) 純度 92.5%/Britannian standerd 純度 95.8%
年号刻印: Date letter
産地刻印: Assay office(TOWN MARK)
工房印: Maker's mark
徴税確認印: Duty mark(ない場合もある)

があるが、17世紀末~18世紀初頭ではまだ規則通りに打刻していない場合も多く工房印のみ、何カ所も押したり、小さな物は刻印なし(純度刻印のみも多い)の物も多く見受けられる。

参考文献
  • Simon Moor, Spoons 1650-1930, Shire Publications LTD, 1999.
  • Ian Pick ford, SILVER FRAT WARE English, Irish and Scottish 1660-1980, Antique Collector's Club,1998.
  • Ian Pickford, ANTIQUE SILVER, Antique Collector's Club, 1999.
  • Michael Sondon, English Silver Spoons, Charles Letts Book LTD, 1982.
  • Ian Pickford, JACKSON'S HALLMARKS, Antique Collector's Club, 2000.
  • 内山田真江「英国骨董紅茶銀器」日本ブリティッシュアンティークシルバー協会、2000年。

c.1670-1700 Trefid (rat-tail,turned up)

Trefid patternの特徴は柄の先が3つに別れている事であり、ボールと柄の接合部がrat-tail,鼠の尻尾のように見える為にこう呼ばれる。
turned upというのは柄の先が上がっている事を指す。

c.1700-1710 Dog Nose (rat-tail,turned up)

Dog Nose は Trefid で見られていた、柄の先の三叉が合わさり、犬の鼻のように見える為につけられた名である。

c.1710-1770 Hanoverian (rat-tail,drop,turned up)

Hanoverian patternでは柄の先はまだ上を向いているが、接合部はラットテイルからドロップ型に変わって行く。

c.1755-1800 Old English (drop,double drop,turned down)

Old English patternからはカトラリーが伏せ置きから、表を上に置くようになり(この変更に関しては諸説あるので、ここでは言及しない)柄の先が下を向く。
rat-tailの接合は殆どなくなり、ドロップか二重のドロップdouble dropになる。

c.1800-1910 Fiddle (drop,turned down)

Fiddle patternはバイオリンの形が元とされ、フランスでは18世紀から使用されていたという。

その他