絨毯に関して

絨毯についても簡単な説明が欲しいという、ご要望があったので私の経験と拙い知識を少々書かせて頂きます。

歴史

絨毯の歴史は大変に古く紀元前5世紀頃と推定されるバジリク古墳から出土されているが、それより更に前に遡り、3000~5000年前から織られていたという説もあるが、明らかな時代は断定できない。少なくとも紀元前5世紀には織られていた。

素材

殆どはウールであり、シルクはごく一部に限られる。現在高級絨毯とされる シルク絨毯は歴史も浅く、本来の絨毯の目的には適さない。高級絨毯としてコルクウール(諸説あるが柔らかい高品質のウールで良いと思う)を使った絨毯があげられる。

織り

絨毯は縦糸と緯糸(よこいと)そして縦糸に結ばれた柄を形成するパイル糸から構成されている。縦糸・緯糸の素材は、装飾用絨毯のシルクは別として、かつてはウールも使われたが現在では綿がほとんどである。縦糸に結ばれたウールのパイル糸を緯糸が押さえる構造となっている。このパイル糸の結び方に地域の特徴があり、イスファハンなどに代表されるペルシャ結びに対し、タブリーズなどはトルコ結びが使われている。一方部族絨毯ではセネ結びなど、独特の結び方が使われる場合もある。

染料

昔は天然染料として赤ーコチニール、黄ー石榴、茶ー胡桃などを使っていたが、今は殆どは化学染料か一部天然染料であり、全て天然染料を使っている工房は少なくなっている。売り手はよく「すべて天然染料」と言うが余り信頼はできない。

産地

日本ではイスファハン、タブリーズ、ナイン、クム等、産地に都市名をつけた工房絨毯が一般的だが、欧米ではカシュガイ、セネ(サナンダジ)バルーチ等、その絨毯を織った部族名や地域名で呼ばれる素朴な風合いの部族絨毯(トライバルラグ)も人気が高い。

デザイン

これこそペルシャ絨毯の真髄でメダリオンからミルフルール(百万の花?)狩猟模様美しい模様が数知れずあるが、ミフラブ模様と言う絨毯は上部がモスクのアーチ型になっている。これはこのアーチ型をメッカの方角に向けて祈りを捧げる祈祷用絨毯、プレイヤーラグである。

本当にざっと基礎を書きましたが、よく小説などで「足首が埋まるほど厚い高級絨毯」などと書かれる事がありますが、あれは間違いです。ペルシャ手織り絨毯では結びが細かいほど、パイルを薄く刈れ、模様もくっきりと浮かび上がります。

毛足の長い絨毯は結びが粗い場合が多く、刈り込むとほどけてしまいます。ペルシャでは「金持ちほど絨毯が薄くなる」と言われます。 また最近シルク絨毯が高級絨毯と思われがちですが、シルクは染料に染まりやすく、逆を言えば洗った時に染料が流れやすいのです(絨毯は何年にかに1回は水を通した方が良いとされます,勿論専門の業者に頼んで下さい)。洗いを掛けたシルク絨毯の染料がフリンジに滲んでしまった物を見たことがあります。信頼できる専門店でしたら、その辺りの説明もあるはずです。

クムシルク絨毯は1930年半ば辺りから生産が始まりました。マスミ工房、ジャムシーディ工房などが有名で、良い絨毯を作っていると思われますが、ウールよりシルク絨毯が高級という感覚には違和感を覚えます。私も装飾用絨毯も買いますので、あまり言えませんが彼の地では土の上に敷いて床とし、吊して壁としていた事に思いをはせるのも大事かもしれません。